所沢高校の730日

１．内容１９９０年代末に、埼玉県立所沢高校の卒業式・入学式が分裂開催になった（わかりやすくするために不正確に書いてあります）事件があった。その事件において、生徒会長がどう行動し、どのように事件を見たのか、他の卒業生がどう考えているのか、ライターがどのように見たのかを書いたのが、この本である。この本によると、決してイデオロギー的な理由で日の丸・君が代抜きの式典を計画したのではなく、所沢高校の伝統である、生徒の自治を無視して、赴任した校長が日の丸・君が代を導入したのが分裂の始まりだとか。生徒は、決して日の丸・君が代を嫌って分裂したわけではないのに、校長や教委は強引に日の丸・君が代を推進し、一部マスメディアや政治家は、「共産党が」といった、事実に反した言論をしている、という。２．評価１０年以上前の話だし、本当のところはどうなのか、ということは差し控えるが、以下、本当だとして話を進めると、生徒が式典に関与するのは、大変結構なことである。可能な限り自分（たち）で決める経験は尊いものである。また、生徒や先生は決して一枚岩でなく、それぞれ悩んでいる姿が書かれていて、よい。今は「あの時なんで」と思っているのかもしれないが、貴重な経験をしたと評価してよいし、貴重な経験が書籍になったのは素晴らしいことである。一方、いわゆる右派勢力が、自分（たち）で決めるということを執拗に妨害している様は、現在の日本の閉塞感につながっているとも思った。昔の事件だが、日の丸・君が代や、現在の社会の閉塞感を考えるうえで貴重な本なので、星５つ。