いのちはモビール (精神科医と整体師の技術対話)

本書のメインは、精神科医の神田橋先生の心からのアプローチと整体師の白柳先生の身体からのアプローチについての対話である。一方、発達凸凹で苦労している家族をサポートする者にとって本書により、神田橋先生が発達凸凹の方に対してどのように向き合って対応されておられるか、その全体像の概要をうかがい知ることができた。いままで、花風社発行の、発達凸凹に関する灰谷孝さんの「人間脳を育てる」や栗本啓司さんの「人間脳の根っこを育てる」、愛着障害に関する愛甲修子さんの「愛着障害は治りますか？」などの本が、家族サポートにとても役立ってきたが、各本の内容の相互の関係についていまひとつ分からずにきた。本書の冒頭で、神田橋先生の診察をよく陪審されている白柳先生が、神田橋先生が発達凸凹を含む困りごとを抱えた人に対して、どのような軸で見立てをされて、その後対応を進められておられるかについて、わかりやすい「まとめ」を提示されており、１章にてそれについてお二人で対話されている。さらに、巻末に白柳さんのまとめに対して、神田橋先生ご自身によるまとめを書かれておられる。このお二人の対話のおかげで、各花風社本の内容を含む全体として、本人にどう向き合ってサポートしていけばよいか、心にストンと落ちるものを得ることができた。同時に、サポートする側の自分自身が向き合うべきものにも気づくことができたように思う。また、こうした貴重な対話を、きちんと本にして世に送り出してくれた木星舎さんにも感謝している。